3.店にて、二人と



 ロイドの店のドアを開くと、威勢良くクラッカーの音がした。
「メリークリスマス!!」
 ドアの向こうでは笑顔の大輝とロイドがクラッカー片手に立っていた。もう酔いが回っているのか、ただテンションが上がっているだけなのか、大輝は上半身裸でサンタの帽子をかぶっていた。ロイドも鼻眼鏡にキラキラとした三角帽を身に付けていた。眼鏡の上に眼鏡とは素晴らしいセンスだ。
 呆然と立ちすくむ私の後ろでドアの閉まる音がし、私は我に返った。
 心を落ち着けるために店の中を見回した。店の商品には布が掛けられ、広いスペースにテーブルと椅子が置いてある。テーブルの上にはケーキやターキー、マッシュポテトなどといったクリスマスパーティにはお馴染みの料理が並べられている。子供たちが食べたからか、皿に対して量は少なめだった。しかし三人で酒を飲みながらつまむのにはちょうど良さそうだ。
「め、メリークリスマス。って何やってんですか、大輝もロイドも…」
 心の平穏を取り戻し、私はちょっと困った顔で二人に言った。
「めでたいときには着飾ったり脱いだりするのがしきたりだぞ」
 大輝は腰に両手を当て、歯がキラリと光るような最高の笑顔で言い放った。しかし半裸なので非常に滑稽だった。仮面やマントが無いと、この人はただの酔いどれ親父だ。
「どこ情報ですか、それ」
 私は頭を抱えた。
「ホーラ、順一モイツモノヨウニ胸板ヲ晒シチャイマショー!」
 親指を立ててウインクするロイド。
「いつものようにってあれは大輝の命令で…ってやめろよロイドー!」
 ロイドの魔の手が私の衣服に迫る。抵抗を試みるものの、いきなり大輝が私を羽交い絞めしてきたせいで身動きが取れない。そうして私もスーツをひん剥かれてしまった。
「さすが笹本、よく似合ってるぞ」
「本当ニコンナ服、順一ジャナイト着コナセマセンヨネー」
「何で私だけ殆ど全裸にされるんですか。寒いです」
 私はスーツどころかYシャツも奪われ、下着姿にトナカイの帽子という奇怪な姿にされてしまった。これじゃあ大輝とロイド以上に変態じゃないか。
「マ、芸術家ハチョット変ナファッションセンスノ人ガ多イデスシネ」
 店の中に置いてあるツリーを見つつ、携帯でさっきのクリスマスツリーの絵を見せ付けるロイド。思わず携帯を逆に折り曲げて壊してしまいたい衝動に駆られる。しかも今の格好は私のセンスではない。
「メールでだけじゃなくて、まだあの絵の話を引っ張ってくるか、お前」
 酔っ払い二人組と違い理性のある私は携帯を壊すのではなく、ロイドを睨み付けるだけにしておいた。しかしロイドはそんなのは気にならないかのようにニヤニヤと笑っている。鼻眼鏡をしているので余計にウザい。
「いや、これは本当に最高傑作だよな…!」
 ロイドの手の中の携帯の画面を見つめて、涙が出るほど大笑いする大輝。
「大輝はもっと酷いの描いてたじゃないですか」
「ヘェー、ソレジャア大輝モ人ノ事言エマセンネ」
 興味心身な目で私を大輝を交互に見るロイド。
「おい、笹本くん?」
「あ」
 今更失言をしてしまったことに気付く。
「もっとひん剥かれたいんだね」
 大輝の笑顔がいやらしいものに変わった。これ以上ひん剥くといっても、身に付けているのは下着と帽子しかないのに。どうも嫌な予感しかしない。
「オッシャ、最後ノ砦モ破ッチャイマショーカ!」
 大輝の考えを読み取ったらしいロイドはノリノリだ。手をワキワキと動かして私に迫ってくる。
「ちょ…、二人ともやめてくれー!!」
 必死の抵抗も空しく、私は全ての衣類を剥き取られてしまった。



←BACK    NEXT→